プロレスと総合格闘技を同じリングで、ひとつの興行内で行うという新しい試みに挑戦した新日本プロレスのチャレンジには敬意をはらいたい。しかし、これ自体が是が非か、成功か失敗かに関してはある意味次回同じような形態で興行を打った時に結果が見えてくるのではないかと思われる。
これはプロレス的に言えば異種格闘技戦、もしくはガチンコというべきか。総合格闘技戦の内容を言っているのではなく、興行として、ソフトとしてプロレスと総合格闘技の一騎打ちとも言える。しかし、対戦カードから言えば、フェア―な対決とは言い切れない。なぜなら、総合格闘技サイドに出場した選手の内、プロの総合格闘技戦での実績又は経験豊富な選手は藤田、高阪、謙吾、バーネット、そしてアンブリッツの5人、つまり5試合出場の10人中半分は未経験か2・3戦の初心者と言える。総合格闘技戦の場合、ベテラン同士が戦えば必ずしもスウィングする観客受けする試合になるとは限らず、逆に膠着したり、わかりずらい試合になる場合もあるが、いかんせん対するプロレスサイドはノアの小橋初参戦であり、しかも蝶野とのミスタープロレス対決。IWGP・NWFのダブルタイトルマッチに、IWGPジュニアタッグ選手権、村上vsエンセンの狂犬対決に、以前参戦が噂されたがキャンセルになって今回初参戦のシャムロックなど、多種多様なカードを用意した。
プロレスサイドはシャムロックと飯塚がU系的なプロレスを見せたかと思えば、ジュニア独自の速くて、子気味の良い試合展開を見せる。村上はエンセンを相手に場外乱闘で大流血し、一昔前のグロいプロレスを復活させ狂気性をみせた。小橋はノアの匂いのするこってりとした試合展開で勝負。高山と永田はストロングスタイル。それぞれの持ち味をうまく表現し、全勢力戦を仕掛けたとも言える。
対する総合格闘技サイドの試合は横綱・朝青龍の実兄のスミヤバザルの負傷により不完全燃焼で終わってしまった対高阪戦と判定にもつれ込み凡戦に終わったLYOTOvs謙吾の試合以外はギブアップもしくはTKOで終わり観客を沸かせた。
果たして、新日本によるプロレスと総合格闘技の2本立て興行は続行されるのか?少なくとも総合格闘技への参入に関しては今後しっかり練習させればポテンシャルが最も高そうな中西、凄い潜在能力を持つ中邑とLYOTOとスミヤバザル、文句なしの実力を持つバーネット、元リングスの成瀬、フリーではあるが新日傘下にいる藤田、高阪、安田、そして2冠王者の高山、今回初参戦したシャムロックと対応できる能力及びキャラを持つ選手には事欠かない新日本プロレスの団体としてのポテンシャルの高さには文句なしといえるだろう。プロレスと格闘技を同じ興行とするか分けて行うかは別として、今後の動きに期待したい。