K-1 5.11 K-1中量級W・MAX日本武道館大会結果
魔裟斗、リング上で涙。ムエタイの伝説も中国散打王者も玉砕の過酷トーナメント。



K-1のリングで初の中量級ワールドGPが開催された。WORLD MAXと名づけられた今大会、ワールドGPに相応しい顔ぶれが揃った。中でもムエタイの“生きる伝説”と呼ばれているガオラン・カウイチット、中国の散打70キロ王者のジャン・ジャポーなど世界の未知の強豪に注目が集まった。

日本からは第一回W・MAXジャパンGP覇者の魔裟斗とその大会では惜しくも準優勝だったがファン投票で票を獲得、主催者推薦枠で今回の参戦が決定した小比類巻の二人。しかし、世界の壁は厚かった。主催者の石井正道会館館長は来年も中量級の日本予選とワールドGPを日本で開催し、定着させることを宣言。この二人を含む日本人選手の今後の奮起に期待したい。




第1試合 トーナメント1回戦 3分3R
日本 シルバーウルフ所属
3R終了時 米国 3-Dマーシャルアーツ所属
魔裟斗
判定
3-0
ドゥエイン・ラドウィック

日本期待の魔裟斗の初戦の相手はK-1参戦を夢見ながら、打撃の試合だけではなくノールール系の試合でも活躍する総合格闘家ラドウィック。しかし、総合格闘家といってもしっかりと打撃をベースにしており魔裟斗が攻撃を仕掛ける度にラドウィックも返してくる。

積極的に前に出る魔裟斗。1R、2Rともに手数で魔裟斗が有利に進める。そして、3R、魔裟斗得意の左フックがカウンターできまり、ラドウィックついにダウン。立ち上がったラドウィックをKOで沈めたい魔裟斗はアグレッシブに攻めるが落ち着いているラドウィックは首相撲やクリンチでかわし徐々に落ち着きを取り戻す。魔裟斗はKOを逃すが文句無しの判定勝ち。



第2試合 トーナメント1回戦 3分3R
オランダ リングホージム所属
3R終了時 ニュージーランド フィリップラムリーガージム所属
アルバート・クラウス
判定

3-0
シェイン・チャップマン

“ハリケーン”ことオランダのクラウスと“南海のベストキッド”ことチャップマンの対戦。クラウスはピーター・アーツからも指導を受け期待されるがまだ弱冠21歳だ。しかし、すでに妻と子供がいるという。対するチャップマンは中国系のコーチに師事し、二人三脚でやってきた有望株。ボクシングベースのクラウスが速い左右のパンチで攻め、ムエタイスタイルのチャップマンはキックと膝蹴りを多用する。8センチの身長差を利用したチャップマンのハイキックがクラウスの頭上をかすめ、ヒヤリとさせる場面もあったがクラウスは相手のキックをしっかりガードしながらパンチで中に入っていく。チャップマンもムエタイ流にかまわずガードの上から蹴り込みクラウスのパンチを止める作戦か。しかし、3R制では止めるまでにはいたらず、クラウスがパンチでチャップマンをコーナーに追い詰める場面もありクラウスが1回戦を突破。



第3試合 トーナメント1回戦 3分3R
日本 黒崎道場所属 1R 1分12秒 スイス ダイヤモンドジム所属
小比類巻 貴之
KO

(膝蹴り)
マリノ・デフローリン

“鬼の黒崎”の下、修行に励んできた小比類巻の相手は以前判定負けをしたスイスのデフローリン。小比類巻にとってはリベンジマッチになるこの相手はアンディ・フグの弟子にあたる。試合開始早々、小比類巻が身長差を利用しデフローリンに膝蹴りで攻め込む。膝蹴りがカウンターでデフローリンの腹部にきまり、ダウン。1回戦で唯一のKOで小比類巻が無傷で駒を進めた。



第4試合 トーナメント1回戦 3分3R
タイ ペッチンディーボクシングプロモーション所属 3R終了時 中国 中国武術協会所属
ガオラン・カウイチット
判定

3-0
ジャン・ジャポー

ムエタイの“生きる伝説”ことガオランと中国・散打の王者ジャポーの異種格闘技対決。ガオランいきなり長い脚を使って上段前蹴りで先制。ジャポーも負けじと打ち返す。ガオランがロー、ミドル、ハイとガンガン速く威力のあるキックを飛ばし、組んでは首相撲から膝蹴り。ジャポーも普段は投げが許される散打ルールで戦っているがガオランの首相撲が強く振り回されてしまう。スタミナを消耗するジャポー。ムエタイ王者と散打王者対決は判定でムエタイに軍配が上がった。



第5試合 トーナメント準決勝 3分3R
オランダ 3R終了時 日本
アルバート・クラウス
判定

3ー0
魔裟斗

1回戦と同じくクラウスはパンチで攻める。魔裟斗はローキックを集中的に狙っていく。1R終盤、クラウスの左クロスが魔裟斗のアゴをきれいに捕らえ、魔裟斗まさかのダウン。2Rにクラウスがラッシュをかけるが、魔裟斗もそれをしのぎ、ローを当てていく。3R、後がない魔裟斗は必死に攻め込む。後半、魔裟斗のフックがあたりクラウスがぐらつく場面があったが両目の下を腫らしながらもひるまず戦い続けるガッツのあるクラウスは倒れない。そのまま、試合終了。魔裟斗はまさかの準決勝敗退。頭からタオルをかぶり泣きながらリングを降りる魔裟斗。大会終了のセレモニーでもリング上で魔裟斗は泣いていた。試合後のコメントで「クラウスのほうがパンチの技術が一枚上手だった。外国人選手相手に自分がさがったのははじめてだし、あんな痛いパンチを喰らったのもはじめてだった。」とクラウスを高く評価した。



第6試合 トーナメント準決勝 3分3R
タイ 2R 2分42秒 日本
ガオラン・カウイチット
KO

(膝蹴り) 
小比類巻 貴之

ムエタイ王者相手にひるむことなくローを入れていく小比類巻。3R戦ってきたガオランに対し1RKOで無傷で上がって来た小比類巻は元気一杯。しかし、ガオランの首相撲に捕まってしまう。首相撲から膝蹴りを入れられ、振り回され、倒れたところ膝を落としてくるというムエタイの常套手段にはまりあばらを痛め急に失速する小比類巻。最後は膝蹴りの連打を浴び、ロープにもたれ掛かるようにKO負け。準決勝で涙をのんだ。



 
第7試合 トーナメント決勝戦 3分3R
オランダ 1R 1分00秒 タイ
アルバート・クラウス
KO

(右フック) 
ガオラン・カウイチット

準決勝を2RKOで勝ち上がってきてまだ余裕のみえるガオランに対して、1・2回戦とも3Rづつフルに戦ってきて両目の下を大きく腫らしたクラウスはもう戦える状態ではないように見えた。ガオランとクラウスには身長差もあり、試合前からムエタイの“生きる伝説”ガオランの優勝を確信する空気が充満する中、試合開始と同時に前にでるクラウス。ムエタイ独特の相手の出鼻をくじく前蹴りも身体をうまく捻ってかわし中に入ってパンチを打ち込むクラウス。両腕で自分の頭を抱え込みガードの体勢をとったガオランにクラウスはパンチの連打を速射し、ガオランの腕のガードの横の隙間からクラウスの右フックが顎をとらえて、ガオランがゆっくりと前のめりで崩れ落ちた。そのままムエタイ王者は10カウントを聞いた。クラウスは満身創痍でありながらムエタイの王者も破りまさかの優勝。すばらしいパンチ力と精神力をみせ初代王者に耀いた。優勝賞金1000万円とKO賞の30万円は家族のためにも貯金すると言う。