BOXING 6.8 WBC、IBF世界ヘビー級タイトルマッチ
タイソン神話遂に崩壊。完全KOで敗れる。



WBC、IBF世界ヘビータイトルマッチ 12回戦
WBC、IBF世界ヘビー級王者 36歳
体重 113 kg
8R 2分25秒 元統一世界ヘビー級王者 35歳
体重 106.3 kg
レノックス・ルイス
KO
(右フック)
マイク・タイソン

現地時間6月8日(日本時間9日)、米国テネシー州メンフィスで行われた現WBC,IBF世界ヘビー級王者レノックス・ルイスと元統一世界ヘビー級王者マイク・タイソンの世紀の大一番。米国の大手ケーブルテレビのHBOとSHOWTIMEがライバルながら共同放送するPPV(ペイ・パー・ヴュー)でも55ドル(約7150円)というプロボクシング史上最高の高値を記録した。観戦チケットはネットオークションで 約125万円相当の値段までついたと言われている。最強神話が今も囁かれるタイソンと王者になりながらもタイソンと戦っていない為かいまひとつ評価の上がらないルイスの対決は最高の注目を集めた。

なんと数百人の警官と警備員が動員され物々しい状態で行われたこの試合。身長196センチのルイスに対し、タイソンは180センチ弱。リーチさは28センチもあった。もし全盛期の状態にタイソンが戻っていればあの鋭いステップインで距離を潰し体格差をカバーできるだろう。しかし、試合前の計量ではタイソンはパワー重視の106キロ強だった。上半身裸になったタイソンは筋骨隆々で腹筋も割れて非常に絞られ調子は良さそうだったが、過去のタイソンが負けた試合を振り返ると体重が100キロを超えていた。タイソンにとってスピードが重要だったこの試合。悪い予感は的中した。

3ラウンドで決着をつけると試合前に語っていたタイソンはスタミナにも不安があったのかもしれない。試合開始早々、全盛期を思わせるスピードで中に入るタイソン。タイソン神話復活の期待を膨らませるに充分だ。しかし、2Rあたりからルイスの得意のジャブを受け始め3Rにはまぶたをカット。5Rあたりにももう片方のまぶたをカットし、両まぶたを腫らし、流血している状態で急激に失速するタイソン。ルイスはジャブ、右アッパー、そして右クロスやフックと的確にパンチを当てていく。そして、8R、スタミナ切れし足が止まったたタイソンをルイスの左アッパーが捕らえ、タイソン一度目のダウン。そして、続けざまルイスの右ロングフックがタイソンの顔面を捕え、タイソンが大の字でダウン。起き上がろうとするが力尽き、1990年のダグラス戦以来、12年ぶりに完全KOされ10カウントを聞いた。

タイソンの約5年ぶりの世界王者返り咲きの野望は打ち砕かれた。ルイスは自身の評価の妨げとなっていたタイソン戦をKOでクリアーし、タイソンのライバルのイベンダー・ホリフィールドにも勝っていることからルイス最強説を証明したことになる。

試合前は乱闘や暴言で警戒されていたタイソンだが、試合後勝利者インタビューを受けるルイスに近寄り、「自分にチャンスをくれて有難う。誰も俺にはチャンスをくれなかったから。」と完敗を素直に受け止め、何とルイスの母親の頬にもキスをした。「試合前の乱闘や暴言は試合のプロモーション(宣伝)の為」と語りタイソンは再挑戦をアピール。タイソンのこの謙虚な振る舞いは、過去の数々の蛮行からにわかには信じがたいが、非常にタイソンを敵視していた地元新聞記者達もタイソンは試合中も試合後も非常に紳士的だったと評価した。

ルイスは次にIBF世界ヘビー級1位のクリス・バードの挑戦を受ける指名試合が待っているが、タイソンとの契約の中にどちらが勝っても再戦できるという条項が入っていると言われておりタイソンが再挑戦できる可能性は大きい。